ごあいさつ
代表
角田 隆志
ある日、書店で手にした本によって、「ハチドリのひとしずく」という物語を知りました。南米アンデス地方の先住民族に伝わるお話です。
森が燃えていました。
森の生きものたちは、われ先にと逃げていきました。
でもクリキンディという名のハチドリだけは、いったりきたり。
くちばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは、火の上に落としていきます。
動物たちがそれを見て、「そんなことをしていったい何になるんだ。」
といって笑います。
クリキンディはこう答えました。
「私は、私にできることをしているだけ。」
(ハチドリのひとしずく・光文社より)
読み終えて、胸の中に、とても温かいものが広がっていくように感じました。
そして、その日から「私にできること」を真剣に考えるようになり、たどり着いた
答えの一つが、「川を愛する会」の発足です。
かけがえのない川を、人間は、便利な生活と引き換えにみるみる汚してしまいました。この大地を流れる幾万の流れを、いつの日か、人が汚す前の状態に蘇らせることなど、考えただけで気が遠くなりそうです。
でも、そんな中でも、「私にできること」は、ちゃんとあります。
一滴の水が集まり、やがて大きな流れとなる川のように、素晴らしい仲間と共に学びながら、「私たちに出来ること」を一つまた一つと実践して、未来の子供たちの笑顔に繋がる流れを、少しでも大きくすることができればと願っております。
理事
小口 美津夫
ワステック株式会社 代表取締役会長
(元JAXA研究開発本部主任研究員)
20××年7月、火星への移住プロジェクトの調査作業を終えた宇宙飛行士で環境クリエイターでもある川尾愛太は3年振りの地球に向けて飛行中である。
火星から地球は時折青白く見えるが、ほとんどは砂嵐の影響で薄茶色のフィルターがかかった感じであった。
しかし、宇宙船が地球に近づくにつれて、地球の表情は「水の惑星」そのものとなった。
宇宙が誕生して138億年と言われ、46億年前に太陽系が形成され始めた。
この地球には人間を頂点として動物や植物、小さなところでは微生物などの生命体が存在する。
現在、地球型生命の存在が確認されている惑星は地球だけである。これは太陽と地球の距離や地球の大きさ、質量等の偶然の重なりの結果である。
原始地球の過酷な環境の中で誕生した生命体は、何十億年もの年月をかけて進化して、やがて人類は文明を築いた。
文明は技術を生み、技術の発展は人間の生活環境の改善に役立つと同時に自然環境の破壊も生んでしまった。
川尾愛太は、青い海、白い雲、緑の大地が輝く「水の惑星」と赤褐色の大地に覆われた火星の表面をオーバーラップさせながら、「水の惑星」の原点である一滴の水が生み出す川を見つめていた。
すべての「いのち」には水が必要です。水の大切さは誰でも理解しているはずです。しかし、その「大切さ」を維持しながら生活する意識と行動はいかがでしょうか?
この地球は、いま生きている私たちだけのものではありません。これから何百年もあとの人間、動物、植物が生きられる地球すなわち「水」が必要です。